写真 - 梶山智大

白いキャンバス

梶山智大氏(静岡)は、2018年に人口約3800人の小さな村、北海道の中札内村に移住した。農業が盛んなこの地域では、冬になると広大な農地が一面雪に覆われる。梶山氏はこれらの空間を「巨大な白いキャンバス」と捉え、2019年から「スノーアート」と呼ぶ作品の制作を始めた。スノーシューを履いて感覚の赴くまま歩き回り、軟らかい雪の上を歩いてできる足跡で100平方メートルほどの大きさに及ぶ巨大な幾何学模様を描き出す。かつて「冬には雪以外なにもない場所」としばしば評されていたこの村は、現在ではこれらの作品を目当てに、観光客や見物人が大勢訪れる地域になった。

梶山氏は日が昇る前から制作を開始し、時には数日間もかけて完成するまで作業を続ける。頭の中に描いた図案を体の感覚のみで形にしてくので、測量器具や地形を確認するための道具は一切使わない。かなりの体力を必要とする作業でありながら、風や吹雪によっては約7日間しかもたない、短命な作品だ。誘客力を上げるために、訪れた人たちが作品を鑑賞できる高さ約8mの展望台が設けられている。しかし、作品全体像を把握するには100mほどの高さが必要になるので、ドローンで撮影された写真が完成した作品を記録するのに必要不可欠だ。その写真は、儚い作品を氷結させるような役割を果たすと同時に、この村への関心を惹きつける宣伝の役割も担っている。

梶山氏が北海道に移住した直後の2019年の作品であり、鉄道エンジニアとしてのキャリアに終止符を打ち転職したことを象徴するマイルストーンである。当初は図案の作成にソフトウェアを使おうと試みましたが、そのやり方には満足いかず、最終的にデジタルリソースの使用を止めて、直感に頼るようになった。「この作品は、私の魂の叫びで、本当に自由の身になれた瞬間が刻まれている」と梶山氏は語る。

2021年のコロナ禍に制作された作品は、より良い未来を望む思いが表わされている。梶山氏の個人的な思い入れが強く、2020年に生まれた娘「怜花」が初めて見た作品である。娘の名前には漢字の「花」が入っているが、その字が作品のタイトルにも使われており、父親の愛情と希望を表わしている。

最後に、梶山氏にとって最も挑戦的な作品の一つである。2025年の冬は非常に厳しく、村は猛吹雪の影響で1m以上の積雪を観測した。その雪の上を歩くと、腰まで埋まり、作品制作は通常に増して大変な作業になった。しかし、大量の積雪は、陽ざしの下で非常に強いコントラストを生み出した。梶山氏は作品を見に来る人たちに幸せが訪れるようにという願いを込めて、六角形の雪の結晶をアレンジして繁栄と幸運のシンボルである八角形のものにして制作した。