日本の大工道具
標準編成
日本の大工道具の特徴は、何より切れること、そして種類が多いことである。
昭和18年に東京都在住の大工が所有する道具の種類に関する調査では、本格的な建物をつくるのに必要な大工道具は179点であった。ここでは、その内87点を展示している。
A. 墨掛道具
線引きしたり、記号を書き込んだりする道具。墨壺は中国起源で、アジアに特有の道具である。また、道具の中で唯一彫刻が施される。
B. 筋罫引
筋罫引は、基準となる面と平行な線を引くのに使用する。
C. 鋸
日本の鋸は引いた時に切れる引き使いが大きな特徴である。そのため、刃を薄くすることが可能になり、より繊細な使い方が可能になる。刃の形によって、木の繊維方向に挽く「縦挽鋸」と、繊維の方向と直角に挽く「横挽鋸」に分かれる。 縦挽き用には、ガガリや鴨居挽き鋸などがあり、横挽き用には穴挽き鋸(鼻丸鋸)、胴付き鋸などがある。また鋸の両側に縦挽き、横挽きの両方の目をつけた両刃鋸がある。
D. 鑿
鑿は用途に応じて大きく叩鑿と仕上鑿にわかれる。叩鑿は玄能や鎚を使ってホゾ穴を掘ったり、脇を削り取ったりするときに用いる。叩いて使うため、柄の頭部分に「冠」と呼ばれる鉄製の環をついている。仕上鑿は叩鑿で掘った部分の仕上げや鉋がかけられない細かい箇所の仕上げに用いる。鑿は用途に応じた刃幅を各種そろえる必要がある。例えば、大入鑿では大小10本を使い分ける。
E. 錐
錐は刃先に回転運動を与えることによって材料に丸い穴をあける構造になっています。用途や使う材料によって刃先に各種の形状があります。釘穴をあける時などに手揉み錐を用いてきましたが、明治に入り洋風建築とあわせてボルトを用いた接合法が導入されると、ネジの形をしたボールト錐が使われるようになりました。
F. 鉋
世界中で、鉋を引いて使うのは日本だけである。板類や角材などの表面を平滑に削るための鉋。一枚刃と、二枚刃とがある。鉋はもとは全て一枚刃であったが、明治時代後半に、逆目を防ぐための押え刃をいれた二枚鉋(合鉋)が考案されて一般的になった。
G. 玄能
玄能は、主に鑿や釘を叩く際に使用します。両小口に同じ大きさの面を持つ両口玄能のほか、頭部の片側が尖り、小さな面となる片口玄能などがあります。
H. 手入れ道具
砥石
砥石は鑿や鉋の刃の研磨に使用します。天然石をほぼ直方体に整形したものが主ですが、近年では人造の合成砥石も使われています。砥石は石材の粒子の粗密の程度によって、荒砥、中砥、仕上砥(合砥)に分けられます。
アサリ槌
目立鑢
台直し鉋
I. その他の道具
ドライバー(-)
釘抜
木槌
定規
斧
刃巾の狭い細長い「オノ」を斧、刃巾が広く片側がくびれている「オノ」を鉞と呼ぶ。
斧は大きく切斧と割斧とに分けられ、割斧とも主に仙仕事に使われる。柄の短い小型の斧は小割斧と呼び、材を小割にする時に使用する。鉞は、主に材木の側面をはつり(削り落す)、角材に仕上げるのに使用する。柄の長い大型のものと、柄の短い小型のものとがあり、後者は大工鉞と呼ばれる。大型の鉞は主に杣仕事に、大工鉞は大工の荒仕事や、木っ端を割って楔を作る時などに使われる。
1. 切斧、ヨキ
2-4. 鉞
5. 大工鉞
前挽大鋸
製材に視点を向けると、室町時代中頃までわが国に縦挽鋸はなく、鑿による打ち割り法で製材が行われていたが、中世に入り2人挽きの縦挽鋸「大鋸」が大陸からもたらされると製材能力は飛躍的に向上し、建築生産に大きな影響を与えるようになった。この大鋸はわが国では短期間で姿を消していくが、それは1人挽きの「前挽大鋸」と小割用の「ガガリ」に形を変えて伝えられ、明治中頃に機械製材に取って代わられるまで製材の主流であった。特に幅広の鋸身をもつ前挽大鋸は日本独特の鋸である。