世界かんがい施設遺産
灌漑は水田に必要不可欠
日本人の主食はごはんです。お米を育てる稲作には、安定した水の供給が必要です。
山が多く平野が少ない日本の地形では、雨が降っても短時間で海に流れ出てしまいます。
そのため、雨の少ない季節や干ばつに備えておかねばなりません。
そこで取り入れられたのが灌漑です。
灌漑とは、河川や地下水、湖などから水を引き、農業物を育てるために田や畑へ水路などを造って人工的に給水を行う施設です。日本の水田は、ほぼ100%灌漑によって稲作がなされています。
灌漑のしくみ
灌漑を実行するためには、水源を確保し、送水や分水の施設を整備しなければなりません。
日本の水田灌漑では主に河川から取水し、用水路を通じて圃場まで水を送ります。
現在では、水源にダムを建設したり、河川に堰を設けたりすることで安定的な取水が可能になりました。
水田に供給された水は、土中に浸透して地下水となったり、排水路に経て河川に流れ出したりして、下流域で再度利用されます。
この水の動きを適切に管理することで流域の水の循環を健全に保つことが可能です。灌漑は単に農業生産のためだけではなく、流域の水資源管理や水環境保全などのための多面的な役割を果たしています。
こうした灌漑を長期間安定的に機能させるためには、受益する農家を含め、地域の関係者の継続した維持管理の努力が必要です。
参照
マイナビ農業
https://agri.mynavi.jp/2018_01_29_17368/
日本の灌漑施設の世界との決定的な違い
国際かんがい排水委員会(ICID)は、歴史的な灌漑施設を「世界かんがい施設遺産」として認定しています。日本では、2024年までに、54ヶ所と数多くの灌漑施設が登録されています。
海外と日本の灌漑施設の違いとして注目されるのは、国や地方自治体からの支援を受けながら、用水を利用する農家で構成される土地改良区という組織が、中心的な役割を担い、施設をつくり、維持管理するという仕組みです。これは「農民参加型灌漑管理」(PIM)の代表例とされています。
多くは、近世以前に開発された地域の農地や灌漑施設を、近代的な技術で施設の改修を図りながらも、農家が継承して現役として活躍させているのです。こうした姿は日本中で見ることができます。
海外において、灌漑は国家事業であり、基幹施設の建設や管理は国が主導する形がほとんどとなっています。日本の灌漑は小規模なものが多いことから農家主体でも管理を完結することができるという面もあるのですが、灌漑管理の実績ある見本として他国から参考とされることも多いのです。
Reference:
Mitsukan Water Culture Center No. 66
Water heritage passed down in the community
Written by Tsugihiro Watanabe