渡辺志桜里
サンルーム、2017年~現在。
水槽、灌漑タンク、ホース、ポンプ、バクテリア、稲、培地。
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クロード・レヴィ=ストロース氏の著書『悲しき熱帯』の有名な一節「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」 にインスピレーションを得た渡辺志桜里氏の作品「Sans room(サンルーム)」は、人間の能動的な行為が「ない」(フランス語でsans)システム、あるいは人間から切り離されたシステムを想像し、そこで他の生命体が相互依存的に共存している状況を描き出すことを提案している。
渡辺志桜里氏は東京を拠点に活動するアーティストである。彼女は、幼少期に遊んだ場所でもある、皇居近くの吹上御苑で採集した生物から着想を得て、2017年にこの作品を制作した。この場所は、生物多様性に富み、大都市の中心部にありながら、ほぼ手つかずの自然が残っていることで知られている。生物の避難所とみなされるこの場所が保全されてきたのは、一部は、数十年にわたって一般公開されていなかったためであり、そのおかげで独自の生態系が発達できた。
人々の営みの近くにありながも、人との関わりが限られているこの場所にインスピレーションを受けた渡辺氏は、魚や自生する植物、バクテリア、岩石などを採取し、ホースで繋がれた水槽に集めて、水の絶え間ない循環によって支えられた、閉鎖的な人工生態系を作り上げている。
本展で紹介するバージョンでは、それらの要素が再考された:一台の水槽では微生物が生息し、別の水槽では稲作が育ち、火山岩が地質学的景観を形成している。部屋を取り囲む照明は、植物の成長を促すだけでなく、システム全体の生存と適切な機能を確保するように設計された。
水をテーマとした展覧会の一環として紹介される「サンルーム」は、水資源とその循環を生命の本質と結びつける解釈を可能にする。生命は、存在して永続するためにはこの絶え間ない流れに依存する。ここで問われているのは、単なる天然資源のことだけではなく、ポストヒューマンの世界における生命の可能性そのものなのである。