錦絵
18世紀後半に定着した多色刷りの木版画を錦絵といいます。錦絵はそれまでの絵画と異なり、庶民の美術作品として大量生産が可能でした。錦絵の題材は美人画や役者絵、風景画などですが、花火や祭りなど日常生活のお祝い事も多く描かれ、この上棟式もそのひとつです。江戸時代後期には、建物の骨組みの組み立てから上棟までを描いた錦絵が大量に出版され、庶民も建物建築のお祝い事として親しんでいたことがわかります。
名所江戸百景 大伝馬町ごふく店
歌川広重 安政7年(1860) 複製品
上棟式のあと、現場から棟梁の自宅または作業小屋まで職人たちが練り歩く「棟梁送り」の様子を描いている。先頭を歩く棟梁が幣串を、次の二人の工匠が雁かりまた股矢と鏑かぶら矢を持っている。工匠の着物が裃かみしもであるのに対し、棟梁は帯刀し、烏えぼし帽子をかぶり、黒紋付の羽織を着ている。紋は交差した鑿のみの下に槌を配したもの。
士農工商之内工
三代目歌川豊国 初版│安政5年(1858) 全3枚
建築の骨組を作る「建前」の様子が描かれている。丸太で組んだ足場の各所に大工が立ち、下から上へ部材などを手渡しで運んでいる。恐らく右から左に工程が進んでおり、右の二人が上げているのは小屋組の部材、中央の二人が上げている長大な部材は棟木かと思われる。そして左の二人が上棟式に使う鏑矢と幣串を運んでいる。
大工上棟之図
香蝶樓國貞(三代目歌川豊国)
天保14年(1843)-15年 全3枚
上棟式の様子を解説付きで描いている。通常は上棟式の後に屋根葺きが始まるが、この絵では杮こけら葺きの屋根が葺き上がった後に上棟式を開催している。丸太で作られた舞台上では儀式が執り行われ、舞台の左右では餅が投げられている。